証券会社の収益は株式市況が活況か否かに大きく左右されます

日本橋兜町にある東京証券取引所

景気が上昇したり、その時代を反映して生活に変化が生まれると、そこに新しいビジネスチャンスを見出した企業家が新しい事業を起こそうとします。

しかし、画期的なアイデアや技術力を有していても資金力が乏しければ、その実現は難しくなります。そこで出番となるのが証券市場と証券会社です。証券市場と証券会社は「経済の血液」である資金を供給する重要な役割を担っています。

企業への資金供給は、銀行などの金融機関が預金として受け入れた資金を貸し付ける形で供給する「間接金融」と、資金を必要としている企業が発行した有価証券を、資金の提供者が購入することで、資金の供給を行う「直接金融」の二つに分けられます。

銀行を仲介役とした「間接金融」では金利は借り手(企業)と貸し手(銀行)との間で決められます。一方の「直接金融」の取引の場となる市場は、資金の供給者である株主と資金を必要とする企業、それを仲介する証券会社で構成され、三者の間で値段が決定される仕組みとなっています。

証券市場は新規に有価証券を発行し、資金を調達する発行市場(プライマリー・マーケット)と、発行済みの有価証券を売買する流通市場(セカンダリー・マーケット)に分けられます。前者は資金調達が必要な企業と投資家を結ぶ市場であるのに対し、後者は有価証券を保有する投資家と購入を希望する投資家を結ぶ市場となっています。

証券市場の機能を円滑にするため、有価証券の売買、売買の仲介、取次・代理などの「証券業」を行うのが、野村グループ、大和証券グループといった証券会社の基本的な業務です。従来、証券業は大蔵省(現金融庁)におyる認可業務でしたが、規制緩和で登録制となり、様々な経営形態が生まれました。例えば、非公開だった株式を新たに市場に供給するIPO業務(新規公開業務)を専業とする証券会社や、インターネットを活用して安い売買手数料を武器に。株式の売買中開業に特化しているネット証券などです。

また、既存の大手証券会社は株式売買手数料に依存する経営から脱却するため、グループを結成し、投信会社や投資会社などの子会社を持つことで収益の多様化を図っています。また、有価証券だけではなく、エネルギー(石油・天然ガス等)、貴金属(金、プラチナ等)、農産物類(大豆、トウモロコシ等)といったコモディティを取り扱うビジネスに参入する企業も出てきました。

証券市場が活発になれば、受入手数料(株式・債券などの引受・販売手数料、投資信託の販売手数料、M&A手数料など)が増え、ディーリング(自己資金での株・債券の売買)による収益も増加しますが、市場が低迷すれば利益は大きく落ち込むことになります。このように証券業界は典型的な市況産業といえます。特にサブプライ・ショック、リーマン・ショックの打撃を受けたあとの証券業界は大手から中傷の証券会社に至るまで業績が大幅に悪化しました。