コンプライアンス体制の整備・強化は金融機関の最優先事項

不祥事は顧客の信頼低下を招く

企業が法令遵守(コンプライアンス)の体制を構築することは当たり前ですが、なかでも経済のライフラインを担っている銀行は関連法令、金融庁が定めたガイドラインにしたがって、公正・公平に業務を行わなければなりません。

西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載、カネボウの粉飾決算などの会計不祥事を受けて制定された新会社法では、大企業に対して適切に機能するコンプライアンス体制の構築を義務付けており、銀行もその体制を整備することが求められるようになりました。

銀行業は金融庁による許認可制をとっており、銀行法は代表取締役(頭取)の解任権まで盛り込まれているため、銀行は特にコンプライアンスに敏感になっています。行員の不祥事やATM等のシステムトラブルは、金融庁から業務改善命令を受け、利用者の信頼低下を招き、企業としての存在価値が問われることになります。

コンプライアンスの組織体制は「内部統制システム」とも呼ばれています。企業自らが業務の適正を確保するために体制を構築することが内部統制で、業務のマニュアル化、財務報告や経理の不正防止、社員教育など大きなコストと労力が必要となります。

近年、金融商品取引法、金融商品販売法、預金者保護法、本人確認法など、金融業界に関連する法律が増えてきました。個人情報保護法もコンプライアンスに深く関わっています。コンプライアンスを銀行経営の最優先事項として、銀行は法務部や監査部を強化することにより、法令違反事例がないかどうか厳しい目を光らせています。

しかし、顧客の中小企業などに対して、銀行という取引上の優越的地位を利用してデリバティブ商品を販売して公正取引委員会から独占禁止法違反に問われた大手銀行や、銀行のミスで投資信託で損失が出たにもかかわらず顧客に適切な対応をとらなった大手銀行、10年以上にわたって行員による横領・着服を発見できなかった地方銀行など不祥事は依然として続いています。