貸金業法で厳しい収益環境に直面しているノンバンク業界

金利引き下げで収益が悪化

銀行は顧客に融資を行う際、貸し倒れを想定して必ず担保を取りますが、ノンバンク(クレジットカード・信販・消費者金融)は担保を取らずに消費者の信用力を判断して、小口の貸し出し(キャッシング)やカード決済(立替払い)を行うという点で双方には大きな違いがあります。

ノンバンクは、消費社会である今日の国民生活に欠かせない存在となり、その貸付金額は75兆円に達しており、民間最終消費支出額(GDP)の4分の1を占めるに至っています。

銀行は担保主義のため、長年にわたって個人よりも企業への融資を優先してきました。そのため、銀行に比べて金利は高いものの、消費者個人のニーズに合わせて返済金額や返済期間などにバラエティを持たせて幅広く融資を行うノンバンクが成長してきたのです。

従来、ノンバンクは登録が受理されれば即営業を行なうことができたため、参入障壁が比較的低い業界となっていました。しかし、上限金利の引き下げや貸金業の設立要件の厳格化を定めた2007年の貸金業法により、業者は最盛期の約4000社から1000社を割り込むなど急減しています。

ターニングポイントは2006年、最高裁が、従来の出資法で認められていたキャッシングの上限金利を違法と判断し、顧客がそれまで払っていた金利の差額の返還が合法化されたこと、2010年に利息制限法の金利がノンバンクにも適用され、顧客への貸付限度額も年収の3分の1となったことで、中小の貸金業者の経営が一気に苦しくなり廃業に追い込まれたことにあります。

ノンバンクの収益の柱は業種によって異なります。すなわちクレジットカードや信販各社は、カード会員が支払う年会費、加盟店からの手数料、金利収入の3つが柱となっており、消費者金融は金利収入が柱となっています。しかし、集客力の高い家電量販店などとの提携カードが増加するなど、カード会員の獲得競争が激化している近年は年会費無料の傾向が強くなっており、年会費は従来のように収益部門としては期待できません。

加盟店の手数料も同様です。通常は加盟店として参加した際の登録料、カード決済端末使用量、信用照会システムの設置費用、売上に応じた手数料が収益となりますが、競合のライバル他社との加盟店の奪い合いにより、手数料は利用代金の3%程度にまで低下しています。

そこで年会費、加盟店手数料では収益を上げにくくなったクレジットカード、信販会社は消費者金融と同様にキャッシングに頼るビジネスモデルに力を入れるようになりました。クレジットカード、信販のキャッシング金利は消費者金融の無担保ローンとほぼ同じだったため、大きな利益をあげることができました。

しかし、増加する多重債務者問題の解決の一環として、2007年貸金業法が施行され、貸付上限金利が引き下げられ、過去に貸し付けたキャッシングの返済金でも利息制限法を適用して返還しなければならなくなったため、消費者金融を始め各社は多額の赤字を記録しました。