ハイリスク・ハイリターン商品から消費者を守る金融商品販売法

リスクとリターンを見極めることが大切

1996年、橋本龍太郎首相(当時)は、市場の透明性と信頼性を確保し、大胆な規制緩和を行う「日本版金融ビッグバン」の実現に向け、国内の銀行、証券、保険などの業態間の障壁を撤廃する規制緩和策を相次いで打ち出しました。

その結果、投資信託、外国為替取引、金融派生商品(デリバティブ)など、様々な金融商品が生み出されました。こうした金融商品は運用が上手く行けばリターンが大きい反面、元本保証はなく価格変動も大きいため、リスクも大きいのが特徴で、手元に一円も残らないということも起こりえます。

当然、これらの金融商品の販売業者は、顧客に対して、そのリスクを十分に説明することが求められましたが、説明責任や罰則を明確に定めた法律がなかったため、「この円高傾向はしばらく続くので、今なら確実に儲かりますよ!」、「損はさせません!」といった、リスクを説明しない勧誘方法で商品の購入を勧め、後々トラブルになるケースが続発することになりました。甘い言葉に騙されて、老後の資金を失ってしまった高齢者も少なくありませんでした。

こうした事態を重く受け止めた国と金融当局が、2001年に制定したのが、金融商品販売法です。この法律は、金融商品の販売業者に対してリスク等の重要項目についての説明を顧客に行うことを義務付け、説明を怠っために購入者に被害が出た場合には、損害賠償責任が生じることなどが定められています。

ここでいう「リスク」とは一言で表すなら「元本割れ」のことで、販売業者は金利、為替、株式相場などの市場変動によって元本割れが生じる恐れがある商品の場合、「満期時に1ドル○×円以上の円高だと元本割れになります」、「運用は国内の株式市場で行いますので、相場が下落した場合には元本が割れ込む可能性があります」といった説明が必要だということです。

対象となる金融商品は、株式、投資信託、社債、商品ファンド、デリバティブ取引、外国為替証拠金取引(FX)などで、対象となる販売業者は銀行、証券、生命保険、損害保険などの金融機関で、代理業者や媒介業者もここに含まれます。