偶然の事故による経済的損失をカバーする損害保険の仕組み

多くの役割を担う保険です

火災や自動車の事故といった偶然の事故で発生した損害を補償する損害保険は、人の生死に対して保険金が支払われる生命保険とは大きく異なります。

東京海上日動火災、三井住友海上など多くの損害保険会社の社名に「海上」あるいは「火災」の単語が入っているように、もともと保険の中心は海難事故や火災を対象としていました。

しかし、一家に一台の自動車が当たり前となった現在では、ほとんどの損害保険会社において自動車保険への依存率が高くなっており、日本損害保険協会の会員25社の元受賞味保険料の約43%(約2兆6000億円)は自動車保険が占めるに至っています。

損害保険は事故に備えて契約者が支払う保険料で成り立っていますが、保険料の算出は、支払われる保険金の限度額である保険金額に保険料率を乗じて行います。保険料率は、過去の損害発生におけるリスクの統計から綿密に計算されます。

保険業法では、生命保険を第一分野、損害保険を第二分野、医療・がん保険などを第三分野と分類しています。第三分野は生命保険会社、損害保険会社の双方画扱うことができる商品です。また、その他の分類法として、様々な種類の保険商品を、①物保険、②ヒト保険、③賠償責任保険、④そのほかの保険の4つに分けることができます。

「物保険」は火災保険や車両保険、海外旅行傷害保険などが該当します。「ヒト保険」は、傷害保険や医療保険、介護費用保険など、人の身体に関する保険です。「賠償責任保険」は他人の身体や物に損害を与えてしまったときに備えるもので、個人賠償責任保険やPL保険(生産物賠償責任保険)などがあります。「その他」はホールインワンやアルバトロスを達成した際の祝賀会や記念品作製等の費用を負担するゴルフ保険などがあります。

損害保険には、事故や自然災害の際の経済的損失をカバーするだけでなく、損害そのものを防止するという機能を持っています。例えば、自動車保険では無事故のドライバーに対して保険料を割り引く制度があり、火災保険でも防火設備のレベルによって保険料に差がつけられています。すなわち、危険度の低い契約者や建築物に対して保険料を遊具することで、損害防止を促す一面もあるのです。

また自動車を使用する際に加入が義務付けられている自動車損害賠償責任保険は、万一事故を起こした際に個人で支払える賠償金には限度があることから、社会的な制度として被害者を救済しようという機能を持っています。

現在の損害保険業界は、東京海上日動火災を中心とする東京海上ホールディングス、三井住友、あいおい、ニッセイ同和損保の3社が経営統合したMS&ADホールディングス、そして損保ジャパンと日本興亜損保が統合したNKSJホールディングスの3メガ体制となっています。

高齢化社会の到来で、医療、介護分野の保健分野のニーズが高まっているものの、外資系保険会社や生命保険会社との競争も激しく、各社とも経営環境は厳しさを増しています。損保の大手である東京海上日動火災と、生保の大手である命じ安田生命保険が、損害保険の販売で提携をするなど、生・損保業界ともに生き残りに必死な状態にあります。