生保会社の現状と保険料の算出方法

外資系生保にどう対抗するか

日本人の死因で上位を占めるがん、心筋梗塞、脳卒中などをはじめとする病気にかかった場合、入院・治療費などの負担を軽減するため、あるいは死亡した場合に備えて加入するのが保険です。加入者は決められた保険料を毎月支払い、不測の事態に備える相互扶助という形で成立しています。

生命保険の仕組みを理解する際に役立つのが、契約者が支払う保険料の内訳を知ることです。保険料の構成を見ると、その中身は「純保険料」と「付加保険料」からなっていることがわかります。

純保険料とは、契約者が死亡した場合に支払われる死亡保険金の財源となる「死亡保険料」と、契約が満期を迎えた場合に支払うための財源である「生命保険料」からなっています。一方の付加保険料は、保険の新規契約に必要な経費である「予定新契約費」、保険料の集金にかかる経費である「予定集金費」、契約を維持管理するための「予定維持費」から構成されています。

保険料を構成するこれら「純保険料」と「付加保険料」は、予定死亡率、予定利率、予定事業費率の三つを基本に算出されます。

予定死亡率
過去の統計をベースとして、男女別、年齢別の死亡者数を予測することで、将来の保険金の支払いに必要な保険料を算定します。予定死亡率が高くなると、その分多くの支払いが必要になるので、保険料も高く設定されることになります。

予定利率
生命保険会社は、契約者から受け取った保険料を、保険準備金として積み立ててそのまま置いておくだけでなく、資産運用も行っています。その際、どれだけの運用収益が期待できるのかを決め、その分保険料を割り引いています。予定利率が低くなると、保険料は高くなります。

予定事業費率
保険会社の運営上で必要となる経費は予め保険料に組み込まれています。予定事業費率が上がると保険料もその文高くなります。

上記のように、この三つの利率をベースに私たちが支払う保険料が決定されるわけですが、保険会社の収入は、①契約時点で算出した死亡予定率と実際の死亡率との差である「死亡損益」、②契約者に対して約束した予定利率と、実際の運用収益の差である「利差損益」、新規契約に必要な経費である事業費の想定と実際の差である「費差損益」で決定されます。

保険契約時の利率(予定利率)は契約が満期を迎えるまで、変わらずに適用されます。したがって、金利が下がって、実際の運用利益は当初予定したものよりも低かった場合でも、高い予定利率が適用される時代(バブル期)に契約した保険者に対しては、その高い利率で支払いを行わなければならないのです。この状態を「逆ざや」といい、逆ざやが増えるほど、保険会社の経営は苦しくなります。

バブル崩壊、デフレによる収入減少、少子化、格差拡大など国内環境の悪化の影響もあり、国内の生命保険会社の業績は悪化の一途を辿ってきました。少子高齢化で主力商品である死亡保障保険の販売は低迷し、成長分野として期待されていた一時払いの個人年金保険も伸び悩みをみせ、資産運用収益も悪化しました。2008年のリーマン・ショックによる世界的な金融不安では保有する有価証券の価値が大幅に下落しました。

人口縮小で国内市場に伸びしろが少ないと判断した大手生命保険会社は、成長シナリオを経済成長が著しい中国、インド、タイといった海外市場に求めはじめました。各国市場での保険を獲得し、売上と収益に早期に反映させるにはM&Aによって、現地の保険会社と銀行との提携による「時間を買う」戦略です。